03-6820-0539

CONTACT

BLOGブログ

CATEGORY

主要国で実施済み・予定の選挙についてズバリ解説!

2024年5月28日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 本年1月台湾の総統選・立法院選挙、及び米共和党予備選について本ブログの「選挙イヤー始まり、台湾、アメリカ、日本?」(https://bca-m.co.jp/blog/255)で述べたが、その後も多くの国で様々な選挙が行われている。ここでそのレビューを行うととともに今後年内に行われる選挙についても解説しておきたい。

台湾(総統選挙・立法院選挙)

 5月20日に頼清徳氏が就任演説を行った。蔡英文前総統の2020年の演説に比して、中国への警戒感を強くにじませる内容であり中国はこれに反発、5月23日に2022年8月以来の台湾周辺での大規模軍事演習を開始した。また立法院においては野党国民党が第1党の「ねじれ状態」となり政策運営に困難を極めている状況である。

 

インドネシア(大統領選挙・議会選挙)

 ブラボウォ氏は10月下旬に就任、同氏が率いるグリンドラ党は議会では第3位の得票率故に少数与党からの政権運営開始を余儀なくされる。大統領選に敗北した陣営を切り崩し、次期政権の与党連合への合流を呼び掛けている。

 

韓国(議会選挙)

 2022年に発足した尹錫悦政権の「中間評価」と位置付けられていた選挙で大敗を喫したことで同氏のレームダック化が懸念されるが、外交政策は大統領の専管事項であり、政権の対日融和外交に大きな変化はないと思われる。

 

ロシア(大統領選挙)

 反体制派の出馬が禁止される中で、得票率90%とされる出来レースの大統領選挙に勝利したプーチン大統領が2030年までの通算5期目となる任期が今月から開始された。2年を超えるウクライナ侵略戦争の停戦目途も全く立たない中、就任後初めての訪問国として中国を選んだことで中ロ関係における中国優位が際立つ格好となっている。

 

トルコ(統一地方選挙)

 エルドアン大統領率いる新イスラム保守派の公正発展党が地滑り的な敗北を喫した。昨年5月の大統領選挙に僅差で勝利した同氏であるが、トルコリラの暴落、年率70%に迫る高インフレに国民も耐え切れなくなってきたようだ。またロシア、イスラエルとも太いパイプを有し、これまで停戦交渉などをリードしてきた同氏であったが最近はその影響力にも陰りが見えてきている。

 

インド(議会選挙)

 1か月余り渡り続いている総選挙もようやく終盤にさしかかっている。5月25日には首都ニューデリーでも投票が行われた。ヒンドゥー教至上主義的な強権政策を推し進めてきたモディ政権であるが、インドの国際的地位を高めたという功績により同氏の国民からの人気は高く、同氏率いる与党人民党の勝利を予想する声が圧倒的な状況。

 

南アフリカ(議会選挙)

 今年第1四半期の失業率32%は主要国でもダントツの高水準。公共インフラの劣化は激しく、汚職がまん延するなど国民の不満が頂点に達しており、反アパルトヘイト闘争を率いた故ネルソン・マンデラ氏のアフリカ民族会議が政権を握ってから30年経過したが、今回同党の議席数は初めて過半数を割り込む可能性が出ており、その場合にはラマポーザ大統領は野党との不安定な連立内閣を余儀なくされる恐れがある。

 

欧州連合(欧州議会選挙)

 現在の最大会派はフォンデアライエン欧州委員長率いる中道右派の欧州人民党であるが、フランスの極右政党国民連合やドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」が形成する「アイデンティティーと民主主義」はEU統合の理念に懐疑的な会派だ。EUが推し進める環境対応、移民政策、緊縮財政に対して異を唱えている。現有議席10%弱からどの程度得票を伸ばすか要注目だ。

 

イギリス(議会選挙)

 大方の予想よりも早期の総選挙実施をスナク首相は5月22日に表明。今月に入りGDP、インフレ率の好転を示す経済指標が発表されたことを好機として実施を決意したと思われる。それでも与党保守党の支持率は野党労働党に大きく水をあけられており(直近の調査では保守党支持率18%に対して労働党は48%)、2010年以来14年ぶりの政権交代はほぼ確実な情勢。労働党のスターマー党首は政権交代の場合においても外交政策には変更なしとすでに表明しており、2大政党制の歴史が長いイギリスならではと思う次第。

 

アメリカ(大統領選挙)

 7月に共和党全国大会、8月に民主党全国大会を控えているが、目下のところ一番の注目イベントは6月27日のバイデン・トランプ両氏のテレビ討論会である。従来であれば本選挙に近い9月に第1回目の討論会が行われるのが慣例、今回これが3カ月早まった理由はよく分からない。81歳と77歳の日本であれば後期高齢者による討論会であり果たしてまともな討論になるのか見物だ。大統領選の結果を左右するのは激戦州といわれる7州(ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルバニア、アリゾナ、ネバダ、ジョージア、ノースカロライナ)の帰すうだ。現在のところ、トランプ氏の支持率がバイデン氏をやや上回っているが、今後の各州の支持率の推移に注目していきたい。また共和党予備選でトランプ氏と争ったヘイリー元国連大使の動静も要チェックだ。5月22日にヘイリー氏は大統領選ではトランプ氏に投票すると明言した。彼女は予備選で約20%の票を集め、一貫してトランプ氏への批判を繰り返してきていた。その彼女が仮に副大統領候補になるとするのであればバイデン陣営にとっては大きな痛手となるに違いない。