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トランプ・トレードの検証
2024年11月19日
市場調査室 室長 チーフアナリスト
溝上孝
ドナルド・トランプ氏が第47代米大統領に選出されてから2週間が経過した。ここではいわゆる「トランプ・トレード」のパフォーマンスを検証してみたい。トランプ・トレードとはトランプ氏が掲げる政策、特に減税及び規制緩和を材料にして特定の金融商品にBETする取引である。その起点であるが、米大統領選挙を対象とした予測サイトでの支持率でトランプ氏が民主党候補カマラ・ハリス副大統領を大きくリードし始めた10月第2週初めの14日に設定、終点は1カ月経過した11月第3週末の15日とする。選挙期間中に明らかになったトランプ氏の政策(減税、規制緩和、高関税賦課、移民抑制)は、基本的に政府債務の拡大、インフレ、米金利上昇、ドル高を促すものである。これを材料に取引対象となっている金融指標・商品として7つをピックアップ、10月14日から11月15日までの価格や利回りの変化を比較してみた(下表)。なお、中国人民元はトランプ氏の公約(関税賦課)により中国からの対米輸出に悪影響を受けること、また米銀株は金融規制緩和によりリスク資産が取りやすくなり収益拡大が見込まれること、また小型株は内需株が中心で法人減税の恩恵を受けやすいことからトランプ・トレードの対象となっている。
米金利の上昇はトランプ・トレードというよりも堅調な経済指標を受け、それまでの大幅な金利低下期待が後退していることの影響が強いと考えられる。銀行株や小型株は同期間でのS&P500指数を大きくアウトパフォームしており、トランプ氏の政策期待の高まりが少なからず影響していたことが分かる。
圧巻はビットコインの上昇率だ。これはトランプ氏が選挙期間中に「米国を地球上の暗号資産の中心(首都)とする」とし、「戦略的準備資産として米国はビットコイン保有すべきだ」と述べたことを受け、支援策や規制緩和への期待感がトランプ氏の支持率上昇とともに高まったためだ。このパフォーマンスを見る限りではビットコインは、正に究極のトランプ・トレードだったと言えよう。
足元ではこれら金融商品の動きは鈍くなってきており、大統領選挙前後のトランプ・トレードは一旦終了したと思われる。トランプ・トレードはあくまでもトランプ氏が公約や綱領として掲げている政策を先取りした動きであり、その実現には連邦議会での審議を経た上で、上下両院での可決が必要であり、政策の効果が表れるには少なくとも2025年央まで待たなくてはならないであろう。またトランプ氏の政策の負の側面、すなわちインフレに対抗するための金融引き締めによる米景気低迷・後退、また高関税賦課が相手国からの報復関税を引き起こす可能性、不法移民の強制送還による労働需給の逼迫等がいずれ市場でクローズアップされることでトランプ・トレードの逆回転も近い将来にあり得るのではないだろうか。
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