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2024年米大統領選でのトランプ氏圧勝を経て自国第一主義傾向強まる

2024年11月12日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 先週11月5日に米大統領選挙が行われて共和党のドナルド・トランプ氏が民主党のカマラ・ハリス氏を抑えて圧勝し第47代米大統領に就任することが確定した。上院でも共和党が多数派を獲得、下院の最終結果は本稿執筆時点では出ていないものの、こちらも共和党が勝利する見込みであるという。いわゆるトリプルレッド出来となる。

 事前の世論調査ではトランプ氏とハリス氏の支持率は拮抗しており、勝敗を決するには相応の時間がかかり混乱が生じることも懸念されていた。ところが結果は日本時間11月6日午後にはトランプ氏の勝利がほぼ確定するほどの圧勝となった。

 最終的な選挙人獲得数はトランプ氏312に対してハリス氏226であり、トランプ氏は当選に必要な270を大きく上回ることになった。さらに筆者が驚いた点は、総得票数でもトランプ氏がハリス氏を大きく上回っていたこと、及び激戦7州(ウィスコンシン、ミシガン、アリゾナ、ネバダ、ペンシルバニア、ジョージア、ノースカロライナ)全てでトランプ氏の勝利となったことである。前者については共和党が民主党の得票数を上回ったのは2004年の共和党ジョージ・ブッシュ氏vs民主党ジョン・ケリー氏以来だと言う。2016年のトランプ氏vsヒラリー・クリントン氏の時は得票数ではヒラリー氏が上回っていたが、選挙人獲得数でトランプ氏が上回ったことで勝敗が決している。後者については世論調査の有効性が改めて今後問われていくことになろう。

 民主党ハリス陣営の敗因は何かということであるが、何よりもバイデン大統領の経済政策、特にインフレに対する有権者の不満に副大統領として政権内部にいたハリス氏が上手く応えることが出来なかったことに尽きよう。また不法移民の問題も我々日本人の想像以上に大きな争点になっていたということだろう。出口調査によれば従来民主党の支持層であったラテン系有権者の共和党支持へのシフトが少なからず見られたと言う。4年後、2028年の大統領選挙に向けて民主党は選挙戦略の抜本的な見直しを迫られることになる。

 また、より大きな視点から眺めると、筆者は今回の共和党の勝利はアメリカ政治の大きな転換点になるのではと見ている。第2次世界大戦から冷戦終了、そしてグローバル経済の拡大という流れの中で、アメリカは自由・平等・民主主義の盟主として、政治的、経済的、軍事的に世界をこれまで、良い意味でも悪い意味でも「リード」してきた。しかし2008年の世界金融危機を契機に徐々に変容を来し、オバマ、トランプ1.0、バイデン各政権を経て自国第一主義の傾向が徐々に強まりトランプ2.0でそれが完成したということではないだろうか。

 この歴史的な潮流はポスト・トランプの時代になっても継続すると思われ、日欧を始めとする自由主義陣営は、米国との付き合い方についてリセットを迫られることになろう。

 

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