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波乱含みの米英仏政局と金融市場変調の兆し!?

2024年7月2日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 選挙ウィークである。先週6月29日にはイラン大統領選挙、6月30日はフランス国民議会選挙の第1回投票が行われた。今週は7月4日に英国総選挙、7月5日にイランで得票数上位2候補による決選投票、7月7日にはフランスで第2回投票、日本では東京都知事選挙及び都議補欠選挙が行われる。また6月27日には米大統領選挙の候補者によるTV討論会が行われバイデン大統領とトランプ前大統領が相まみえ、結果バイデン劣勢を印象付けた。金融市場でもこれらにより新たな動きを見せ始めている。

 フランスでは極右の国民連合(RN)が33.2%の得票率で圧倒的な強さを見せた。マーケットでは極右政権誕生による放漫財政の発想から10年物独仏国債スプレッドが一時80bpを上回り、また仏株式指数CAC40が半年ぶりの安値を付けるなどの動揺を見せており、第2回投票の結果、及びその後の組閣の動きには目が離せない。一方でユーロは対円では1999年の単一通貨誕生後の最高値を更新し続けており、7月2日現在173円台半ばでの推移となっている。

 イギリスでは事前の予想で与党保守党は最大野党の労働党にダブルスコアの差をつけられており、第3党である「リフォームUK(旧ブレグジット党)」に対しても支持率で肉薄されている。労働党党首スターマー氏が次期首相に指名されるのは確実視される中、2大政党のおひざ元たる英国ではフランスと違って政権交代への不透明性は小さいのだろうか、今のところは金融市場に大きなストレスを与える動きとはなっていない。

 米国ではTV討論会の結果を受けて、主要メディアはプランBと銘打ち、バイデンに立候補を取り止めるよう促す動きが活発化している。とは言え8月19-20日に予定されている民主党全国大会まで残り1か月余りで候補者を交代させるということであれば直ちに着手すべきであろうがバイデン氏に立候補取り止めの意思はまだ見られない。米株式市場は7月1日にナスダックが最高値を更新するなど好調さは持続しているもののトランプ2.0を睨んだ動きとして注意を要するのは米長期金利の動きだ。討論会終了後の2営業日で米10年物国債は18bp上昇している。ここでもトランプ大統領による減税政策、その財源としての輸入関税引き上げによるインフレ上昇を予想した動きと考えてよいであろう。 

 最後に日本であるが、都知事選挙は現職の小池百合子候補が蓮舫候補、石丸候補をリードしている。もっとも投票率如何によってはで無党派層を蓮舫氏、石丸氏が取り込むことで予想外の接戦になることも予想される。同日に行われる東京都議補欠選挙(9選挙区)では自民党が擁立している候補も多数(8選挙区)見られ、この結果が9月に行われる総裁選での岸田首相の再選を左右することになる可能性は大きい。もっとも国政選挙では無いので金融市場への影響は限定的か。

 それにしても思うのはスナク英首相、マクロン仏大統領の思い切りのよさである。両人の置かれている立場はそれぞれ違うのだが状況が自党にとって不利であろうともスパっと議会を解散する機動力たるや感心する。彼らに負けず劣らず支持率が低迷している岸田首相はこの選挙ウィークに何を思っていることであろうか。

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