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ドル円相場の行方、日銀の金融政策スタンス、イベントリスクを控え不確実性高まる
2024年10月22日
市場調査室 室長 チーフアナリスト
溝上孝
10月21日の海外市場でドル円は急伸し、150.82円を付け7月31日以来の水準を回復した。思い返せば7月31日は日銀が金融政策決定会合において市場の予想に反し政策金利を0.25%に引き上げ、また植田総裁のタカ派寄りの発言と相まって円キャリートレードの巻き戻しによる強烈な円買いを誘発する起点となった日である。そこでここではドル円のこれから年末にかけての動きをチャート及びファンダメンタルズ両面から考察してみたい。
ドル円は終値ベースで7月10日に付けた高値161.66円から9月16日には146.01円まで下落した。この間の下落幅は21.5円となり、ここから計算される半値戻しの水準は151.13円となる。これは10月21日の終値150.82円と0.31円の差となり、近似値であり半値戻しはほぼ達成したと言ってもよいであろう。またフィボナッチリトレースメント61.8%で計算した場合のドル円の戻り高値の目途は153.62円となる。移動平均線による分析では、200日線は8月上旬の下落により、下値支持から上値抵抗へと変化しており、151.33円付近が戻り抵抗として意識される。また、21日線は10月上旬に戻り抵抗から下値支持へと変化しており、足元では147.50円が下値支持の目途となろう。今局面でのドル高は対円だけではなく主要通貨に対して全面高、すなわち米ドルインデックス(DXY)は9月30日から上昇に転じ、一時は節目の104.00を突破した。8月2日のいわゆる雇用統計ショックによる急落時の水準まで回復してきていることは重要であり、ドルの基調は強いと言わざるを得ない。
ここまでドルが回復してきている主な理由は米経済の一人勝ちともいうべき良好なファンダメンタルズである。このところの好調な経済指標を受けて、市場の利下げ見通しは緩やかに後退している。次回11月6-7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において金利先物市場では25bpの利下げが織り込まれているが、次々回12月17-18日のFOMCでの利下げは完全に織り込まれているわけではなく、利下げ見送りの予想も少しずつ上昇、米10年債利回りは10月21日には7月26日以来となる4.2%近辺まで上昇している。日米長期債の利回り差は拡大傾向にあり、ボラティリティーが安定してくれば再び円のキャリートレードの妙味が増してくることもドル円のサポート要因となろう。
現在のところ10月30-31日に行われる日銀の政策決定会合では、政策金利の引き上げが実施される可能性は低いと見られる。10月27日の衆議院議員総選挙直後の会合であることや11月5日に米大統領選を控えていること、足元の物価上昇が落ち着きつつあることを踏まえると、日銀が利上げを急ぐ必要性はないと思われる。但し、現水準からさらに円安が進行していくようであれば財務省サイドから円安をけん制する発言が出てくることも予想され、ドル円が上記に示した戻り高値目途を簡単に上抜けていくことは予想しづらい。
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