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日本の労働生産性について

2024年4月2日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 最近日本の労働生産性についての議論が盛んになっている。経済学では一国の経済成長率と労働生産性上昇率には密接な関係があり、また実質賃金率もそれに見合った水準になるからだ。 

 この文脈で日本の労働生産性が他先進国と比較して低いということがよく指摘される。確かに(公)日本生産性本部が経済協力開発機構(OECD)データに基づいて算出した2022年の日本の時間当たり労働生産性(労働1時間当たりの付加価値)はOECD加盟国38カ国中30位とデータ取得可能な1970年以降、最も低くなっているという。

  しかしながら筆者はこのデータはあまり意味がないと思っている。なぜなら先進国経済で大きなウエイトを占めるのはサービスなどの非製造業であり、その生産性の「水準」を国際的に比較することはナンセンスだからだ。例えばインバウンドで外国人を唸らせる日本の「おもてなし」のようなものを労働生産性という数値に反映させるなど所詮は不可能であろう。

 むしろデータとして信頼性のあるのは労働生産性の伸び率であろう。OECDは別途主要国の労働生産性の推移、具体的には加盟国の2015年における労働生産性を100とした場合の1970年―2022年の水準を算出している。これを見ると1990年代半ばごろから近年まで、日本の生産性上昇率はドイツや英国とあまり変わらない。つまり日本の労働生産性がことさら伸び悩んでいるということではなく、我々は必要以上に卑屈になることはないと思う。

 だからと言って労働生産性を高める努力を怠っていいということにはならないのは当然だ。デフレの影響とはいえ我が国の名目GDPはこの30年間殆ど増えていないのは紛れもない事実なのだから。

 官民一体となってDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、業務の効率化・省力化に努めることが重要だ。また無駄と思われる業務プロセスの大胆なカットも必要であろう。

 足元では34年ぶりの株高、実質賃上げにつながった春闘、日銀の17年ぶりの利上げ等、我が国のデフレ経済からの脱却が現実味を帯びてくる中である種の高揚感が生まれている。上記のような労働生産性向上への取り組みを我々日本人の一人ひとりがその持ち場に応じて取り組んでいくのには好機ではないだろうか。