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元邦銀ディーラーが読み解く日銀のターミナルレート

2024年6月25日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 日銀は6月24日に前回金融政策決定会合(6月13-14日開催分)における主な意見を公表した。これは総裁を含む9人のボードメンバーの意見である(発言者の名前は公表していない)。これを読む限りでは利上げに前向きな意見と慎重な意見が併記されており、次回7月30-31日の会合での利上げ可能性は五分五分といったところか。筆者は6月5日付けの本ブログで次回会合の政策金利0.25%への引き上げを予想したものの、次回会合では今後1-2年程度の国債買い入れ減額の具体的な計画が発表されることを踏まえれば利上げは次々回以降に先送りされる蓋然性が高まったと考えている。

 さて日銀ウォッチャーの間では日銀の利上げの到達点(ターミナルレート)はどこにあるかという議論が喧しい。この議論は極めて経済学的思考を要するが故に極めて分かりにくいところがあるので筆者はこれについてよりかみ砕いた説明を試みたい。まず用語の説明からであるが、

自然利子率:景気への影響が緩和的でも引き締め的でもない中立的な実質利子率(名目利子率から期待インフレ率を差し引いたもの)のこと。

期待インフレ率:家計や企業が予想する将来の物価変動率のこと。

 あるべき政策金利はこの自然利子率と期待インフレ率の合計となる。なおこの考え方は米国の経済学者であるジョン・ブライアン・テイラーが提唱、米連邦準備制度理事会(FRB)も参考にしているテイラー・ルールをより単純化したものである。 

 日銀が4月30日に発表した「経済・物価情勢の展望(背景説明を含む全文)」によれば、我が国の自然利子率は、推計手法によってマイナス1%-プラス0.5%の幅があるとのことである。また期待インフレ率について植田日銀総裁は決定会合後の記者会見等の場で1.5%近辺と折に触れて説明している。従って政策金利は0.5%~2.0%ということになる。なお期待インフレ率は2026年度には日銀のインフレ目標である2%でアンカーされることになるとしているので最終的な政策金利の幅は1%-2.5%ということになる。推定される自然利子率に計1.5%の幅があるのであるべき政策金利もレンジになってしまうが、中央値を算出すれば1.25%-1.75%ということになり、この辺りが現段階における日銀のターミナルレートと推定できるのではないだろうか。

 最後に現時点での主要国の政策金利のグラフを追記しておく。

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