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ドル円相場の現在地

2024130

市場調査室 室長 チーフアナリスト:溝上孝

 

昨年の1212日の本欄で今年のドル円相場の見通しについて述べた。

「日米金利差の縮小を背景に相場の基調は円高であるが、円金利上昇のスピードは緩やかであり、米国金利は景気の底堅さから下げ渋り、ドル円の下値は限定的であり、140円割れの水準は長続きしない」と予想した。当時145円台であったドル円は1228日に安値14025銭まで下落したが、年明け以降ドルは反転し足元では148円台前半まで上昇している。

 

日米金利を巡る直近の状況を経済指標、マーケットの反応などから眺めてみると米景気は消費を中心に堅調、米PCEコアデフレーターの過去6か月間の年率は1.9%まで低下、結果として実質金利が高止まりしていることからFF金利先物市場では年末までに計5(1.25%)の利下げが見込まれている。

また日銀は先般の金融政策決定会合において金融緩和の継続維持を決定、マーケットにおいては3月中旬の春闘集中回答日を経て企業の大幅賃上げを確認後、4月にマイナス金利解除を行うとの見方が主流となっており、日米金利差縮小による円買いのシナリオは不変である。

 

 

 

一方需給面に目を転じると興味深いデータが明らかになった。

今年1月から新NISAの取り扱いが開始されたが、Quick資産運用研究所によると年初から118日までの投資信託の資金流入額6,150億円のうち、全世界株式指数の「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するタイプのファンドが2,740億円、「米S&P500種株価指数」に連動するタイプのファンドが2,173億円となっており、この2つのタイプのファンドで全体の8(4,913億円)を占めているこが明らかになった。

NISA関連の個人投資家の資金流入額がどのくらいを占めているのかは明らかではないが仮に7割として3,439億円が年初からの10営業日で流入したことになる。

これらは為替ヘッジを伴わない投資信託であり、単純に年間ベースで引き直してみるとおよそ82000億円と見込まれ(3439÷10×20×12)、昨年のインバウンド消費額である53000億円(円買い要因)を遥かに超える円売り要因となる。 

以上を踏まえてドル円相場の予想レンジは前回と不変の137.00円―155円としたい。

※上記見通しは現時点での予測であり、将来の動きを約束するものではございません。今後の経済情勢や各国の金融政策の変更等により、予測レンジは変わります。