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マーケットに影響を及ぼす不確定要因とは?

2024年10月8日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 現在今後の為替・金利・株価の行方を左右する3つの不確定要因について述べたい。

 1つ目は米景気が緩やかに減速し安定成長に移行していくとされるソフトランディングは実現するのかということである。10月4日に米9月雇用統計が発表されたが、事前の予想を大幅に上回る内容であった為、マーケットは大きく反応した。為替はドル円が2円上昇、8月中旬以来の148円台乗せ、また米長期金利は2年債利回りが3.93%(前日比+0.219)、10年債利回りが3.97%(前日比+0.120)それぞれ上昇した。週明けの10月7日には10年債利回りは8月1日以来の4%超の水準まで上昇している。投資家の間では次回11月7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて米連邦準備理事会(FRB)が前回9月18日に続き50bpの大幅利下げを行うと見込む向きはいなくなり、またシカゴマーカンタイル取引所(CME)金利見通し(Fed Watch)によれば25bpの利下げが実施される確率が87.3%、利下げ見送りの確率12.7%となっている。米国経済の先行き見通しはこの1カ月で大きく変化しており、ソフトランディング期待が高まりつつある。然しながら一方でインフレ再燃の可能性も依然残っており予断を許さない状況だ。

 2つ目は残り1カ月を切った米大統領選挙の行方だ。8月の民主党大会でハリス副大統領が大統領候補に指名されて以降、彼女はトランプ前大統領を支持率で凌ぐ勢いであったがここにきて支持率は拮抗、特に激戦7州(ウィスコンシン、ミシガン、アリゾナ、ネバダ、ペンシルバニア、ジョージア、ノースカロライナ)での支持率の差は数ポイント、最終的にどっちに転ぶかはアメリカ政治の専門家でも全く分からない混迷状況にある。また大統領選挙と同時に行われる米上下両院選挙の行方については当選する大統領の所属政党に対して議会の多数派(上院は今回改選議席数が民主党23に対して共和党11となっており共和党優勢とされている)がどちらの政党になるかで今後4年間の政権運営に大きな違いが生じると予想され、こちらにも注意を払う必要がある。さらにここまで両候補の支持率が拮抗している場合には仮にどちらかの候補が僅差で勝利したとしてもその後の政権移行がスムーズに行われるのかという問題もある。そういう意味では米大統領選挙は11月5日の投開票日で終了ではなく、来年1月6日に上下院議員による選挙人集計で勝利者が最終確定するまでは安心できないのではないか。2021年1月6日には選挙結果を不満に思うトランプ支持派が暴徒化し議会を襲撃するという事件もあったのだから。

 最後は中東情勢である。イスラエルはガザ地区に潜伏するイスラム組織ハマスをほぼ制圧した余勢を駆ってレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに壊滅的な打撃を与えた。これら武装派集団の盟主たるイランは10月1日にイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射するなど両国で本格的な戦争が勃発する可能性が取り沙汰されている。これを受けて原油価格は大きく上昇、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI原油11月限は10月1日から5営業日続伸しており、10月7日終値で1バレル=77.14ドルまで上昇、この間の上昇率は13%以上となっている。原油価格上昇はインフレに直結することから要警戒、また中東危機がエスカレートした場合にはイランによるホルムズ海峡封鎖も想定され、そうなった場合には世界経済に与える影響は甚大なものとなり、とりわけ化石燃料を同海峡経由で大量に輸入している我が国にとっては是非とも避けたい脅威だ。

以上、3つの不確定要因について述べてきたが筆者が一番不安に思うのは3つ目の中東情勢だ。イスラエルのネタヤニフ首相は引退が決まったバイデン大統領がレイムダック化しているこの時期を狙って勝負を仕掛けるのではないだろうか。日本の解散・総選挙はいかにも間が悪いと思う。

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