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ドル円・日本株の反転を阻む3つの要因

2024年8月13日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 先週初に大きくリスクオフの方向に傾いた金融マーケットに落ち着きが見られてきた。ドル円は一時141円70銭まで下落したが、8月13日現在146~147円台で推移している。日経平均は8月5日に過去最大の下落幅4,451円を記録した後に下げ止まり、8月12日(終値35,909円)と8月5日(終値31,458円)に生じたチャート上の「窓」を埋める動きを見せている。米株主要3指数(ダウ平均、ナスダック、S&P500)も上値に重さは残るものの、徐々に下値を切り上げつつあるようだ。もっともこのまま再びリスクオン相場へと傾斜していくと考えるのは早計だ。これだけ大きく下げた相場が再び上昇に転じるには相応の時間とそれを裏付ける確たる材料が必要だ。

 ここでは先週の下げ相場を演出したマーケットに内在する3つの不安要因(ドル円相場、米景気、日銀金融政策)について整理・検証してみたい。

 まずドル円相場の行方である。円キャリートレードにより積み上がった円ショートポジションの急激な巻き戻しによりドル円は7月3日の年初来高値161円65銭(ニューヨーク終値)から8月5日の安値144円13銭まで10.8%下落している。当面の戻り高値の目途は下落幅の3分の1戻しである150円となる。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、8月6日時点の非商業部門の円売り越し額は1万1354枚(1419億円)にまで減少している。7月2日時点、直近の最大売り越し額18万4223枚(2兆3027億円)と比較して93%減となっており、市場の円ショートポジションはほぼ解消されたと推定される。一方でここからの円キャリートレードの復活には日米金利差(現状3.05%)が急激に縮小しないこと並びにドル円のボラティリティ低下が必要であり、その意味では時期尚早と思われる。

 次に米国景気動向であるが、先週のブログに書いたように筆者は米景気の大幅な落ち込みは予想していない。先週リセッション観測が強まったのは8月2日に発表された7月米雇用統計の低調な結果を受けたものであるが、この背景にはハリケーン「ベリル」という一時的な天候要因があった可能性大と言われている。かたやいわゆるプライムエイジと呼ばれる25―54歳の労働参加率は同じ7月には84%と2001年以来の高水準となっている。単月の経済指標に左右されず多面的に米経済の行方をウォッチすることが求められる。今週発表の7月米消費者物価指数及び小売売上高に注目したい。 

 最後に日銀の金融政策であるが、前回の日銀政策決定会合でタカ派色を示した植田総裁のコメントに対して8月7日内田副総裁は函館市内の講演で火消しに入り「市場が不安定な状況で利上げをすることはない、当面現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要があると」と述べている。彼の発言は逆に市場が安定している状況下では年内再利上げを否定するものではないということであるが、市場に安心感を与えることとなり、日銀は株暴落の重要戦犯だという恨み節も聞かれていた状況に絶妙なフォローを行っている。今週は15日には第2四半期(4-6月)の実質国内総生産(GDP)速報値が発表される。過去4四半期連続して前期比マイナスの民間最終消費支出の帰趨が注目される。

 

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