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米大統領選挙と自民党総裁選

2024年9月17日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 9月10日に米大統領選の候補者討論会が行われ、トランプ前大統領とハリス副大統領が初めて相まみえる形で自身の政策について論戦を交わした。討論会はトランプ氏にとって実に7回目であり(2016年に3回、2020年に2回、今年6月27日にバイデン大統領との間で行われたのが1回)、もはやルーティンなのかも知れない。今回も相変わらずのトランプ節炸裂であり、「人の意見を聞かない、事実にもとる話を例に挙げて議論を押し切ろうとする」などこちらも慣れてきたせいか新鮮味が無くなってきているように感じる。一方のハリス氏は今回が初めての討論会であることから事前準備を入念に行った上で臨んだと言われており、その甲斐もあってかその後の世論調査で討論会ではハリス氏がトランプ氏をリードしていたという意見が多数を占めた。先月の民主党大会以来のハリス氏に対するユーフォリア的な期待は一時に比べて勢いを失いつつあるとはいえ、討論会を無事にこなしたこともあってか、全米での支持率は依然としてハリス氏がトランプ氏を僅差で上回っている。株式市場でも新エネルギー関連銘柄の上昇がS&P500をアウトパフォームするなどいわゆる「ハリストレード」なる言葉も取りざたされ始めている。

 もっとも支持率の差は誤差の範囲内であり、激戦州7州(ウィスコンシン、ミシガン、アリゾナ、ネバダ、ペンシルバニア、ジョージア、ノースカロライナ)では両候補の支持率は拮抗しており、今回の大統領選挙は2000年のブッシュvs ゴア時に匹敵する混戦になるのは必至と言われている。次のビッグイベントは10月1日のバンス・上院議員vs ウォルズ・ミネソタ州知事による副大統領候補のテレビ討論会である。バンス氏は7月の共和党全国大会で副大統領候補に選出されてから間もなくに、子供のいない独身女性を揶揄する発言を行っており、これが大失点となりその後は精彩を欠いているように見える。ウォルズ氏は教師、アメリカンフットボール部のコーチを務めた経歴があり親近感のあるおじさんキャラの持ち主(60歳)であり、貧困層出身であるものの海兵隊退役、イエール大学で法学博士学位取得、ベンチャーキャピタルの経営者、ベストセラー作家という華麗な経歴のエリートのバンス氏(40歳)との対決がどのような印象を有権者に与えるのか今大統領選のもう一つのヤマ場になりそうだ。

 自民党総裁選は9月12日に告示が行われ、過去最多9人が立候補し、連日候補者の動向がメディアで報道されている。次期首相が事実上これで決定するので国民の関心が高くなるのは当然であろう。筆者などは先日テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で全候補者がぞろぞろと一同に会する様を観て思わず笑ってしまった。1人5分の持ち時間としても全員が話を終えるのに45分もかかってしまうのはやむを得ないが、政策論争があまり深まらないのではないかと米大統領選挙と比較して案じてしまう有様だった。もっとも世論調査(下表)によれば9人のうちで決選投票に進みそうなのは、石破茂氏、小泉進次郎氏、高市早苗氏の3名に絞られてきたようだ。新総裁が選出された後、速やかな衆議院解散・総選挙という流れになれば、ほぼ同時期に米大統領選挙(11月5日)と衆議院選挙(11月中?)が実施されることになる。アノマリー的に日本の解散・総選挙、米国の大統領選挙後には株価が上昇することが確認されている。金融市場における2つの不確実要素(日米政局と米国景気の行方)のうちの1つが払拭されることになることは足元でボラティリティーの高止まりが続いている日本株にも好材料となり、再び今月初めの戻り高値、日経平均で39,000円を目指すのではないか。

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