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岸田首相とバイデン大統領

2024年8月20日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 先週8月14日に岸田首相が来月の自民党総裁選に出馬しない、つまり事実上の首相退陣宣言を行った。これを受けて総裁選(9月12日告示、27日投開票)に向けて10人以上の候補者が乱立しそうな状況だ。またたこれに先立ち先月21日にはバイデン大統領が11月の大統領選挙での再選を断念、選挙戦からの撤退を表明、副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党大統領候補として共和党候補のドナルド・トランプ氏を支持率で猛追、8月19日から開催されている民主党全国大会(イリノイ州シカゴ)に臨んでいる。

 岸田首相は2021年10月に就任、バイデン大統領は2021年1月に就任しているので二人は3年弱の間ともに日米政権のトップを務めたことになる。この間両者は外交・防衛面でがっちりタッグを組み、ウクライナ戦争、中国の軍事台頭などの諸問題に対処してきた。もともと自民党政権は対米関係に関しては共和党政権との相性が良いのだが(1980年代の中曽根首相とレーガン大統領、2000年代の小泉首相とブッシュ大統領、2010年代の安倍首相とトランプ大統領)、この二人は気が合っていたようである。昨年5月のG7広島サミットにおける両首脳(原爆を落とした国と落とされた国)による慰霊碑への献花、また同年8月の米国キャンプ・デービッドでの日米韓首脳会談、今年4月の岸田首相の国賓待遇での訪米と議会上下院の合同会議での演説などは首脳間の信頼関係と友好関係が無ければどれも実現は難しかったのではないだろうか。

 そして両者の退陣理由である。バイデン大統領の場合、直接的には年齢問題であろうが高インフレなど経済失政による国民からの不人気も大きい。岸田首相の場合は政治資金規正法違反問題による政治不信と合わせて物価高に対する国民の不満からくる支持率の長期低迷、彼の下では選挙を戦えないとう党内のムードであろう。またバイデン大統領が再選を断念、彼よりも若いハリス氏によって(とは言っても彼女はアラ還であるが)民主党の支持率がにわかに上昇し始めていること、これも岸田首相が自らの進退を決めるのに少なからず影響したのではないかと思う。

 

 そうは言っても岸田首相の3年間の実績は大いに評価すべきである。就任当初の「新しい資本主義」というイデオローグ的アプローチこそ最後まで振るわなかったが、下記の7項目については十分に評価されるべきだろう。

1.防衛三文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)の閣議決定による戦後防衛政策の大転換

2.日韓関係の改善

3.原発再稼働への転換、アルプス処理水の海洋放出断行

4.名目国民総生産600兆円達成

5.デフレ脱却の実現(植田日銀総裁を指名し金融正常化に道筋をつけたこと)

6.資産倍増計画の目玉である新NISAの導入

7.株価のバブル後の高値34年ぶりに更新 

 岸田首相に対しては心からご苦労様でしたと言いたい。新総裁が選出される来月下旬、岸田首相は来月下旬にニューヨークで行われる国連総会に出席する方向で最終調整しているらしい。バイデン大統領との会談、お互いのこれまでの労をねぎらう機会を持たせてあげたいものである。

 

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