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円急騰、日経平均暴落、マーケットの大混乱は収まるか!

2024年8月6日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

  

 この1週間、金融マーケットは大荒れの状態、株式・債券・為替のボラティリティが急上昇している。先週の経済イベント、特に植田日銀総裁の記者会見(7月31日)でのタカ派に傾斜した姿勢、及び雇用の悪化を示す内容となった米雇用統計(8月2日)がそのトリガーとなった。前者については植田総裁の「政策金利は中立金利に比べてかなり下の水準にあり、利上げはそこの範囲での調整である」、また「(過去の利上げ局面において上限となった)0.5%の壁も特に意識していない」との発言は明らかに金融緩和姿勢を堅持しながら慎重に賃金と物価の好循環の進捗を注視していくという従来のスタンスからの逸脱だろう。 

 ドル円は政策金利発表後(0~0.15%→0.25%)一時152円を割り込んだものの15時30分記者会見が行われる前には153円台を回復、日経平均は39,101円(前日比576円高)で取引は終了した。それ故に筆者はこの時、日銀は政策金利の引き上げに関し株価暴落の無い適度な円安調整を上手にやり遂げたなと思っていた。ところが会見が終了、欧州時間に入ってから植田総裁の上記発言を材料にドル円は続落、年初来の重要なサポートとなっていた151円60銭を割り込み、節目の150円も下方ブレイク、円高に歯止めが利かなくなった。また急速な円高進行を嫌気して日経平均も8月2日には36,000円を割り込んでいる。更にその夜に発表された米雇用統計により米国の景気後退、年内大幅利下げの思惑が強まり、ドル安、株安、長期金利の急低下が起こり、週が開けて昨日8月5日の東京市場においてドル円は141円66銭まで急落、日経平均は1987年10月20日のブラックマンデー以来の下落(4,451円)となりセリングクライマックスを迎えるに至ったのである。

 

 昨日の株式市場のパニック的な売りを見て恐らく日銀は内心穏やかではないであろう。今年始まった新NISAで株式投資を始めた個人投資家にとっては相当な逆風である。政府が音頭を取って始まった資産運用立国の気運に水を差す形となってしまった。今回の日銀の利上げは政府に忖度、円安防止に主眼が置かれていたと解釈できる。ところが薬が効きすぎた。タイミングが悪いことにマーケットが米国景気のハードランディングを意識し始めた時に重なってしまった。 

 ドル円は円高へとトレンドが転換した可能性も残るが、それを判断するにはもう少し様子を見なければならない。一方、今回の急落が2022年3月を起点とした長期円安トレンドの調整局面とすれば、2022年11月にインフレ率が市場予想を下回ることで生じたいわゆる「逆CPIショック」時の調整と同程度のものと仮定すると(ドル円は14.7%円高に振れた)、ドル円は138円まで円高が進む可能性がある。ただ、今日の動きを見る限り、筆者は足元の急速な円高・株安は一旦落ち着くのではないかと思っている。本ブログ執筆時点でドル円は145円台を回復、6日ぶりの陽線引け(寄付よりも終値が高くなること)になる可能性が高い。また日経平均は3,000円を超えて上昇しており、こちらも4日ぶりの陽線引けなりそうだ。また、CMEが提供するFed Watchツールによれば次回9月17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で50bpの利下げが行われる確率が72%(残りは25bp)、また現在マーケット(30日物FED FUNDS先物)では年内4回利下げを織り込んでいる。筆者は米国のマイルドリセッションを予想、大幅な景気落ち込みには異を唱える立場であり、今後発表される米消費・雇用関連の経済指標次第ではあるが、現在のマーケットの利下げ織り込み度合は行き過ぎと見ている。しばらくドル円は現行レンジ内(141~145円)でのもみ合いを予想する。

 なお本日厚生労働省が6月の毎月勤労統計を発表した。実質賃金が前年同月比1.1%増と2年3か月ぶりにプラスに転じている。8月15日に内閣府から発表される今年4-6月のGDP統計内容と合わせて先の植田日銀総裁の発言内容を事後的にマーケットが消化する可能性も存外あるのではないだろうか。その時には株価にプラスに作用しよう。

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