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今年後半のドル円相場見通し

2024年7月16日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 

 先週7月11日、本邦通貨当局による円買い介入と思われるドル売りの動きによりドル円は161円台から157円台に4円以上大幅に急落した。またそれまで高値圏で推移していた欧州通貨・オセアニア通貨に対しても円は急騰、ユーロ円は史上最高値の175円台、ポンド円は16年ぶり高値の207円台、豪ドル円は33年ぶりの高値109円台からそれぞれ171円台、203円台、107円台に下落している。日銀が翌日公表した日銀当座預金増減要因の予想値と市場の推計値のギャップから介入推定額は3兆5000億円程度とされている。財務省による介入は今年に入ってから4月29日、5月1日に次いで3回目ということになる(正確には当該介入有無の真偽は今月末に財務省による「外国為替平衡操作の実施状況」の発表を待ってからとなる)。

 ところで筆者は6月18日の本ブログで日米金融政策のアクションが先送りされるようであれば160円への再トライ、そこを上抜けると円安に歯止めかきかなくなることを警告した。その観点から言えば先週7月9日のブログで述べたように米国の景気減速がいよいよ現実味を帯びており、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFeD Watchツールによれば次々回9月17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)において25bpの利下げが行われる確率は88%、日米政策金利差縮小によりドル円の上昇には今後自ずと限界が見えてくるのではないか。

 これまで筆者を含めて多くのアナリストは米国の利下げ→日米金利差縮小→円高という基本シナリオを描いてきた。残念ながら米国の利下げ先送りによりこの予想は悉く外れてきたのも事実だ。しかしながら前述のように利下げがようやく米連邦準備制度理事会(FRB)の射程圏に収まってきた。これを以て2022年から継続してきたドル高円安トレンドの終焉と解釈する予想が勢いづいている。筆者はこれに違和感を覚える。理由は3つある。

 

 1つ目は日米金利差とドル円相場の相関が変調を来しているのではないかということだ。最近は日米長期金利差が縮小しても以前のように円高に作用しなくなってきている。今のところ相関のかい離であって逸脱ではないのかも知れない。しかし過去においては日米金利差とドル円の相関がゼロ~マイナスであった時期もあったことを思い起こしておいた方がよいだろう。

 2つ目は介入後のドル円の値動きである。神田財務官は往々にして為替ディーラー顔負けのタイミングでドル売り円買い介入を効果的に仕掛けて来る。確かにそれによってドルは一定程度下落するが、数日すると再びボラティリティは低下、キャリートレード活発化によりドル円は再度ジリジリと上昇していく。これは日銀が利上げに極めて慎重になる一方で人手不足から来るサービス価格上昇によりインフレ率が高止まり、円実質金利のマイナスの長期化が背景にあるのだろう。年内2回の米利下げが織り込まれている状況においてもこのドル円の値動きに今のところ変化がないのは気になるところである。

 3つ目はトランプ氏の再選可能性がここにきて急速に高まってきている。先月行われた大統領選候補者TV討論会におけるバイデン大統領の敵失に加え、先週7月13日のトランプ氏を狙った狙撃事件での彼特有のパフォーマンスはアメリカ人がいかにも好みそうであり、いわゆるトランプ2.0の確度が高くなりつつある。彼が掲げる拡張的な財政政策による長期金利の上昇によるドル高への思惑が暫く続くのではないだろうか。

 以上を勘案して今年後半ドル円は下がっても155円まで。年末にかけて再び7月3日につけた高値である161円後半を目指す展開になると予想する。

 

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