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トランプvsハリス どうなるテレビ討論会!?
2024年9月3日
市場調査室 室長 チーフアナリスト
溝上孝
11月5日の米大統領選挙まで残すところ2カ月余りとなった。今年は世界の人口の半分、40億人超が投票すると言われた選挙イヤーであったがここにフィナーレを迎えることになる。
ところで筆者は昨日、英ファイナンシャルタイムズ誌の編集長ルーラ・カラフ氏の講演を聞く機会を得た。彼女は今年これまでに行われた選挙結果について、民主主義が一定の機能を果たしているものとして、これを評価すべきと述べていた。
具体的な例を挙げると、
- 欧州では欧州議会選挙(6月)やドイツ東部2州(テューリンゲン州・ザクセン州)の議会選挙(9月1日)での極右政党の躍進に見られるように移民排斥を唱えるポピュリズム政党が勢いを増しているものの、国政レベルで彼らが政権を握るには至っていない。フランスの国民議会選挙(6・7月)で「国民連合(RN)」は第1回投票で得票率首位を獲得したが第2回投票では中道・左派の選挙協力により、同党は獲得議席数で3位に止まり単独組閣は不可能となった。
- イギリスでは下院選挙(7月)で与党保守党が大敗、労働党に政権が移行した。同党はスターマー党首の下で社会主義色を薄めて中道左派路線への転換に成功しており、金融市場はこれを好感、選挙後には英国株・債券は堅調、英ポンドも底堅い動きをしている。
- インド総選挙(4~6月)ではモディ首相率いるインド人民党(BJP)が苦戦、議席数を大きく減らし過半数を割り込み、またイラン大統領選挙(7月)では欧米との対話を重視する改革派のペゼシュキアン氏が当選、新大統領に就任した。両国の選挙結果は事前の予想とは大きく異なるものとなっている。なお、カラフ氏は西側民主主義国ではないアジアの大国において今回の選挙において国民の声が適切に反映されたことは、世界全体にとって好ましいことであると述べていたが、筆者もこれに同意したい。
さて米大統領選挙である。バイデン氏の選挙撤退、副大統領カマラ・ハリス氏の立候補により、民主党が勢いづいている。最新の世論調査によると全米レベルでハリス氏はトランプ氏を僅差であるがリードしている。また選挙結果を決定づけることになる激戦7州(ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルバニア、アリゾナ、ネバダ、ジョージア、ノースカロライナ)における支持率も両候補者は拮抗している。最終的にどちらに転ぶかは全く予断を許さない状況だ。
ハリス氏はバイデン政権の副大統領として、同政権の負の遺産(高インフレ、移民問題)を引き継ぐ形となっている。特に経済問題の対応に関してはトランプ氏の方が上手くやれると見ている有権者は多い。今月10日は両候補によるテレビ討論会(ABC放送)がペンシルバニア州フィラデルフィアで実施される。これまでハリス氏はマスコミに対して一切取材を受けてこなかった経緯がある。もっとも同氏は先月29日にCNNのインタビューに応じているが、この時は録画であり、副大統領候補のミネソタ州知事ウォルズ氏が同席していた。予備選挙を経ていない急ごしらえの大統領候補としてボロを出さないようにしたいという選挙対策チームの配慮であろう。その意味でも来るテレビ討論会は超重要であり、大統領選の最大の山場になるのかも知れない。バイデン大統領は6月27日にこれで躓いたのだから。
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