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右傾化する欧州議会の危機!どうする日本?

2024年6月11日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 6月6-9日に実施された欧州議会選挙で極右や右派など欧州連合(EU)に懐疑的な勢力が得票数を伸ばした。各会派の内訳及び獲得議席数(日本時間 6月11日午後13時38分現在)下表の通り。

 現欧州委員長フォン・デア・ライエン氏が所属する中道右派の欧州人民党(EPP)は議席増、第2会派である中道左派の欧州社会・進歩同盟(S&D)及び中道の欧州刷新(RE)は議席減となったが、彼ら3派による欧州統合を推進する親EU派が引き続き過半数を維持する見込みである。一部で危ぶまれていた右派勢力による欧州議会の席捲という事態は避けられたものの社会党、特に緑の党の不振もあって議会の右傾化は避けられないであろう。

 フランスとドイツの与党勢力の劣勢はより深刻だ。フランスでは極右政党の国民連合(RN)が31.4%の得票、マクロン大統領が所属する与党連合の14.6%を2倍以上の差で引き離している。この結果を受けてマクロン氏は直ちに国民議会(下院)を解散、6月30日に第1回投票、7月7日に決選投票が行われることになった。国民に極右台頭の危機感をあおって浮動票を集めて逆転を狙うという作戦のようであるが選挙で再び与党が敗れた場合にはRNの党首、若干28歳のジョルダン・バルデラ氏が首相となり、大統領と首相の所属政党が異なるねじれ状態となる。

 ドイツも連立与党は惨敗、連立与党3党(社会民主党、緑の党、自由民主党)は大きく議席を減らしている。極右政党のドイツのための選択肢(A f D)が議席獲得数で最大野党の保守、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次いで2位となる見通しだ。A f DはフランスのRNとは違い歴史が浅く、移民や難民の受け入れ反対を掲げ2013年に発足、ショルツ政権下で経済低迷や移民政策の不満を背景に党勢を拡大している。ドイツでは通常、議会の解散が行われることはないため来年まで議会選挙は持ち越されることになる。

 このようにEUの二大国における極右勢力の浸透がより深まったことで上述のEU議会選挙の結果以上にその環境・移民政策の右傾化が進むと予想する。また我が国にとっては、ヨーロッパの新たな政治潮流が外交・経済政策へどう影響するのか、米大統領選挙でトランプ氏が勝利した場合も想定して複合的に考えを巡らす必要があるのではないだろうか。