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半導体株プレミアム剥落により日本株は調整局面入りに

2024年4月23日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 先週4月19日に日経平均株価は前日比1011円の大幅安37,068円で引けた。終値ベースの下げ幅が1000円を超えるのは2021年2月26日以来、実に3年2カ月振りである。ショートタームでの日経平均の上げトレンドは2023年10月4日の30,526円から始まり、今年2月22日にはバブル後最高値の38,915円を抜け、3月22日に直近の高値40,888円を付けている。4月22日終値の水準(37,438円)は、高値から3分の1押しの水準、すなわち40,888円-(40,888円-30,526円)÷3=37,434円である。

 今回の日経平均の下げの直接的な原因は米半導体株の下げということに尽きるだろう。オランダに本部を置くASML決算(4月1日)において新規受注額が予想を下回ったこと、半導体受託生産大手のTSMC決算(4月19日)において今年のメモリーを除く半導体業界全体の生産予想が引き下げられたこと、この2つの決算発表を契機に今年3月中旬以降軟調に推移していた米半導体株に対して投資家による大きな調整売りが入った。これまで日米の株式市場をけん引してきた半導体株の雄エヌビディアの株は19日に10%下落している。 

 ここからどうなるのか。筆者は半導体に関するバッドニュースはほぼ出尽くしたと見ている。買われ過ぎ感のあった半導体株に対して程よい調整が入ったとの認識だ。とは言え本年1月から開始された新NISAを始めた投資ビギナーにとっては今回の下げは試練になるのかも知れない。計上していた評価益が減少し始めているのだから。しかし積立投資枠ではドルコスト平均法により株が下がる過程でこれまでより多くの口数の投資が可能となる。ここは焦らず悠然と構えているのをお薦めしたい。今週から本格化する日米企業決算の内容を消化しつつ、日本株の上昇局面は今後も継続するだろう。 

 今後の金融市場の行方を占う上で重要なポイントを3つ挙げておきたい。1つ目は米連邦準備制度(FED)の金融政策スタンスだ。4月30日―5月1日には連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。政策金利変更は見込まれてはいないが、声明文及びパウエル議長の記者会見でのコメントは要注目だ。3カ月連続で高めの物価指標が発表され市場の利下げの思惑は後退している。4月26日に発表される米個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)の結果次第ではマーケットが大きく反応する可能性がある。 

 2つ目は為替の動向である。ドル円相場は下方硬直的になってきている。4月19日にイスラエルによるイランへの攻撃の報道でリスクオフの動きが強まり為替市場では一時ドル円が急落した。しかし下値は極めて限定的で153円半ばをブレイクすることも無く、その後急速に値を戻し、再び155円を伺う展開となっている。当局による介入警戒感は引き続き根強いが、一昨年のような効果的な介入(円高が5円以上進行するような)を狙うあまりに財務省は動きづらくなっているように見える。先週ワシントンで行われたG20(主要20カ国の財務省・中央銀行総裁会議)に先立って開催された日米韓3カ国会合で、韓国とともに通貨安に対する深刻な懸念を表明、3カ国で為替市場の動向について緊密に協議すると合意されたが、円をサポートする材料としては迫力不足なのも否めない。

 今週4月25-26日には日銀の政策決定会合が開催される。輸入物価の上昇につながる円安は5%を超える今春闘賃上げにより高まりつつある実質賃金のプラス転化の期待に水をさしかねないが故に、円安防止を念頭に植田日銀総裁が国債買入額の減少など何らかのアクションを打ち出す可能性も否定できないと思う。