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ドル円相場はじり高の展開か…日米経済指標から読み解く

2024年4月9日

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 ドル円は先月の日銀政策決定会合においてマイナス金利が解除された直後に上昇、その後ほぼ3週間に渡り151円台での膠着状態にある。相場のモメンタムとしてはドルが上放れる方向にあると思われるが、本邦金融当局の介入警戒感は根強い。 

 2022年に始まったドル円の上昇トレンドの過程で、151円台をつけたのは、2022年10月21日、2023年11月13日、そして今回と3回目になる。この水準を上抜けると155-160円が視野に入ってくるという意味で金融当局にとっても152円は死守したいレベルに違いない。

 また、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されているIMMドル円の投機筋(Non-Commercial)のポジションは143,230枚(1兆7904億円)のネットショートであり、過去10年で最大規模となっていることも投機筋が円をここから積極態に売り込むことを躊躇させるであろう。

 しかしながら筆者は遠からずドル円は現在の水準を上抜けて155円台を目指す展開になると予想する。米10年債の利回りが昨年11月以来となる4.4%台まで上昇、今年2~3月に形成していた4.0%~4.3%のレンジを上方にブレークしたことがその根拠だ。

 

 ファンダメンタルズから見てもドルサポート材料には事欠かない。米労働省が4月5日に発表した3月雇用統計では非農業部門の雇用者増加数(前月比)が市場の予想(20万人増)を大幅に上回る過去10カ月で最多となる30万3,000人の雇用増、また1月と2月を合わせた雇用者増加数も前回発表より2万2,000人増加となった。失業率も前月の3.9%から3.8%に低下、さらに平均時給も安定的に推移しており、賃金インフレ再燃の兆候も見当たらない。このように絶好調な米雇用状況は足元の原油価格の上昇と相まって、今後の米利下げ期待の後退を示唆する内容となった。

 一方の日本であるが、厚生労働省が公表した2月分毎月勤労統計によれば実質賃金のマイナス基調は23カ月連続して継続、また内閣府が同日公表した地域ごとの景気動向を的確・迅速に把握できるとされる景気ウォッチャー調査の結果も景気の現状・先行きを示す指数が前月比低下するなど振るわず、日銀の追加上げにつながるような経済データは現状見当たらない。33年ぶりの5.24%の賃上げとなった今春闘の結果が、実質賃金をプラス圏に浮上させるにはまだ時間がかかりそうであり、賃金と物価の好循環が実現する見通しは立っていない。 このように日米のファンダメンタルズ格差、そこから生じる日米金利差の高止まりはドル円が現在のレンジを上抜ける強力な誘因になると思う。