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中国経済について思うこと

202426

市場調査室 室長 チーフアナリスト

溝上孝

 

 国際通貨基金(IMF)は1月の世界経済見通しにおいて中国の2024年、2025年の実質GDP成長率をそれぞれ4.6%、4.1%と予測(2023年推計は5.2%)したが、その後発表された中国経済年次報告では不動産開発企業の整理・対応などの対応が遅れた場合には成長率が4%を割り込むと警告している。中国のGDPに占める不動産部門の割合は関連産業を含めて約3割を占めており、同部門が構造不況に陥っているのは中国経済にとって極めて深刻である。

 

 

 筆者は、「中国経済はすでに詰んでいる」と思っている。理由として、1.不動産部門の不振とそれに起因する不良債権の増加、2.政府債務の急増、3.消費の伸び低下、4.海外資本の流出(対内直接投資の減少、香港ハンセン指数は年初来10%下落)、5.デフレ経済の本格化、6.政府の小出しの経済対策、7.米中デリスキング、など枚挙にいとまがなく、まさに八方塞がりである。

 

 いわゆるジャパニフィケーション(日本化)という言葉がある。1990年代の日本のバブル景気崩壊後の「失われた20年」を特徴付けるような「長期的な不景気」「デフレ」などといった状態に特定の国の経済が陥っている状況を指す。

 中国はまさにこれである。政府が抜本的な経済対策を打ち出さない限り今後の中国は長期にわたり経済不振に苦しむことになると予想する。

 

 処方箋は中国政府がかつての日本のように問題の先送りをせず、恒大集団や碧桂園などのようなゾンビ企業化した大手不動産会社の速やかな清算を進め、モラルハザードに陥らない形での地方債務、特に隠れ債務といわれる地方融資平台債務の整理を果断に行うことであろう。昨年10月に政府は1兆元の特別国債発行を打ち出しているがGDP(126兆元)の1%未満ではあまりにも心もとない。5%、6兆円は欲しいところである。